• Case. 01

  • 首都高速道路(改)上部工補強工事1-106

  • 首都高速道路(改)
    上部工補強工事1-106

  • 概要

  • ここで紹介するのは、首都高速4号新宿線の千駄ヶ谷付近にあるゲルバー構造を有するプレストレストコンクリート橋(以下、PCゲルバー橋)の補修、補強工事だ。この工事は、同時に橋脚工事やコンクリート床版の補強工事およびPC桁等のコンクリート剥落防止工事を実施することによって、構造物の長寿命化や安全性の向上を図るものであった。加えて、首都高速が通常通り供用されている中での実施が前提の工事であり、車両走行を持続するための構造耐力を確保しながら、難易度の高い工事をいかに実現させるかという点が大きな課題として立ちふさがったのである。橋梁の保全事業に早くから取り組んできた川田建設の技術力を注ぎ込み、立ちはだかる多くの課題を一つひとつ解決することで成功させた工事なのだ。

プロジェクトの相関図

Point.01

パイロット工事に挑む

1964年、首都高速の建設は東京オリンピック開催に合わせて、急ピッチで仕上げられた。今回工事の対象となったのは、このタイミングで国立競技場、東京体育館の最寄りとなる千駄ヶ谷地区に建設された高架橋であり、60年近く供用されてきたPCゲルバー橋だ。PCゲルバー橋は、連続桁の中間部に鉤形の掛け違い部を持ち、比較的橋脚の間隔を広く取れることから、建設当時は数多く採用された形式である。しかし、老朽化によってゲルバー構造の箇所に損傷が生じており、この部分の補修・補強を行うことが喫緊の課題となっていた。首都高速道路株式会社より課題解決のための技術提案の要請を受け、川田建設として検討をスタートしたのが2012年の秋。車両走行を持続するための構造耐力を確保するために、新たな工法の開発を前提とする施工計画を提案すると、その内容が評価されて受注に至った。実は、このゲルバー橋の補修・補強に本格的に着手することは、首都高速道路にとっても初の経験であったのだ。そしてこのプロジェクトは、工法の確立と施工ノウハウの蓄積によって、同様の問題を抱える橋梁の保全に新たな道を開くパイロット工事として、業界の大きな期待を担うものとなった。

Point.02

新たな工法の開発とその実証

ゲルバー橋の補修・補強のために川田建設が取り組んだのは、「ゲルバー連続化」と「ゲルバー支承取替え」という2つの方法。「ゲルバー連続化」とは、劣化しやすいゲルバー構造自体を解消し、橋桁の連続化を図るもので、長寿命化に適した改良方法である。しかしPC橋は、コンクリートにプレストレスを与えて緊張状態として、その強度を維持している。このために定着具という器具を使用しているのだが、ゲルバー部の連続化にあたっては、この定着具を一時撤去する必要があるため、その際のプレストレスの維持と再緊張を安全かつ確実に行える工法の開発が不可欠であった。しかし川田建設は、幾度も実験を繰り返すことで、要求性能を満たすことができる新たな工法の実現にたどり着くことに成功する。一方、「ゲルバー支承取替え」は、耐震性能の維持のためには連続化が好ましくない箇所での実施となった。この工事は、既設のPC定着具を撤去することなく行う必要があった。施工空間にも制約が大きく、極めて狭く閉ざされた空間で損傷した支承を取り出し、交換する必要があったのだ。このため、狭小空間においても交換可能な支承構造の検討に加えて、実験室に原寸大の施工空間を再現し、作業性の確認を行うようにした。このように事前の十分な検証を踏まえた上で施工に入ったことで、現場作業を安全かつ円滑に進めることに成功したのだった。

Point.03

橋梁保全に新たな道を開く

工事完了は、2017年11月のこと。さまざまな苦難を乗り越えて、首都高速の長寿命化に貢献したスタッフたちは、すでに次の課題に取り組みはじめている。この工事で得られた実績としては、「ゲルバー連続化」と「ゲルバー支承取替え」という今回の工事の計画段階で、2つの特許を取得することができたこと。この事実は、今回の工事が前例に倣って進められたものではなく、従来無かった新たなアイデアや創意工夫によってはじめて実現できたものであることを示している。「困難と言われているPCゲルバー橋の保全を完遂できたことで、川田建設の技術力をアピールすることができたのではないか」と設計業務を担当した岩瀬祐二(事業推進部技術一課 課長)が振り返ってくれたように、同様の問題を抱える橋梁の保全に、新たな道を開いたことは明らかだ。社内の技術発表会や学会発表、ドイツで開催されたシンポジウムでもこの工事における工法は好評を得ており、その具体的な反応や効果は、今後に期待されるところである。

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