ケーススタディ3 東海環状 庭田高架橋PC上部工事
Case. 03
東海環状 庭田高架橋PC上部工事
東海環状 庭田高架橋
PC上部工事
概要
愛知・岐阜・三重の3県にまたがる 延長約153kmの東海環状自動車道。名古屋市を中心に広域的な交通ネットワークを形成する東海環状は2005年の愛知万博の開催に合わせ、先行して東回りルートが開通した。西回りルートも約9割は利用可能となっているが、「養老IC〜いなべIC」間の18.7kmのみ未開通区間になっている。この未開通区間の中心に位置するのが、国土交通省中部地方整備局が施主となる「東海環状 庭田高架橋PC上部工事」だ。国の管轄プロジェクトとしては近年では類を見ない規模の工事に、川田建設はこれまでの実績と新たな技術、そして情熱を原動力に臨んでいる。
Point.01
1990年頃、東名高速道路・名神高速道路・中央自動車道が接続する愛知県内では、慢性的な渋滞が発生。逼迫した交通状況の改善と交通機能の強化を目的に、東海環状自動車道は計画された。東回りルートは先行して開通したが、2000年代に起きた政権交代の影響などもあり、西回りルートの工事は停滞。しかし、産業振興や観光活性化を見据えて早期開通を求める声が高まり、開通に向けた工事が順次発注されることとなった。「東海環状 庭田高架橋PC上部工事」も、その一つ。2024年1月末に国土交通省中部地方整備局から公告され、川田建設は受注に向けて関係部署が一体となって準備を進めた。が、入札前に現場に立ち入れないという大きな制約が設けられた。そのため、施工部門では設計図書を頼りに、要求される施工が実際に可能か否か、工期内に完了できるかどうか入念に検討。加えて、品質管理や安全管理を踏まえた実現性と独自性のある技術提案へと磨き上げ、現場が目視できない状況下でも、これまでの実績から工事費や人件費、そして工期などを積算していった。受注のために連携する企業との協議を繰り返し、JV(共同事業体)として入札に臨んだ。同年5月、吉報は届いた。
Point.02
「東海環状 庭田高架橋PC上部工事」は案件化され、担当者たちははやる気持ちを押さえ早速現場に乗り込んだ。その一人が、本工事の所長を務める新川敦士。「上部工事にいつ着手できるかを見極める必要があった」と当時を振り返る。自分たちの目で地形や先行する下部工事の状況を確認し、張出架設工法と支保工架設工法を併用した施工に取り掛かったのは2025年4月のことだった。山間や渓谷、または交通量の多い道路上など、地上から支え(支保工)を組むことが困難な立地に採用される張出架設工法。急峻な地形を有する庭田高架橋においても、橋脚からコンクリートを打設して橋体を張り出す工事が進められている。支えがなく、空中に伸びていく橋体を、もう一方から伸ばされた橋体と連結させることで、橋は架かる。架橋のために現場の条件に応じて専用機材をカスタマイズし、“なければ創る”の精神で新たな機材を製作しながら、臨機応変に施工を進められるのは川田建設の大きな強みになっている。そして、各工程に凝縮するのは先を見据えた技術と工夫だ。橋梁の長寿命化を追求し、橋梁の外ケーブルには交換やメンテナンスのしやすい部材を採用。南海トラフ地震などの発生の可能性を踏まえ、揺れを吸収する「ゴム支承」はグレードを向上させ橋脚に設置した。さらに支保工ではICTを用いた施工現場端末アプリを導入し、作業の効率化と施工精度の向上を目指す。安全性と効率性の両輪によって川田建設は日本のインフラを支え続けていく。
Point.03
東海環状自動車道の全線開通は、中部圏における広域交通ネットワークの完成を意味する。渋滞の緩和や交通機能の向上だけでなく、物流の効率化、企業の進出、観光の活性化などによって長期的に経済波及効果をもたらす。南海トラフ地震などの災害時には広域的な代替ルートとして機能し、緊急輸送道路としての役目も期待されている。全線開通の一翼を担う庭田高架橋もその規模感や工法などにより、社内外を問わずに注目されるプロジェクト。国交省や同業他社、業界関係者、建築・土木を学ぶ学生たち、または開通を待ち望む近隣住民に向けた現地視察会を数多く受け入れるだけでなく、社内の若手社員を中心とした現場研修の重要なフィールドにもなっているのだ。現場の指揮を執る新川も、常に若手社員の成長を見守る。「技術面や施工面は若手に任せている。最終的に判断すべきことはイニシアチブをとるが、現場内では一歩引く。小さい現場も大きい現場もやることは変わらない。ただ、規模に応じて“現場を回す”ためには気配りと目配りが重要になることを、経験してもらいたい。高品質な橋梁を完成させて、その実績と評価のバトンを若手につなげることが私の役割。この現場を通じて、さらにレベルの高い現場を担える技術者へと成長してもらいたい」。その都度、最適解が変わる現場では経験の積み重ねこそが糧になる。庭田高架橋のプロジェクトを無事に完遂したときの達成感は、若手職員にとっては確かな自信になり、今後さらに大きなプロジェクトに挑むための一歩となるだろう。